アイ･メットエレクトロニクス株式会社
視界に入ってきた株式公開
更なる飛躍のカギを握るのは「通信と放送の融合」に即した新規事業
時代の流れを読み取り、柔軟に事業展開しているアイ・メットエレクトロニクス。「日本一の企業との取引」と志も高く、3年後には売上高25億円、経常利益率10％以上を経営目標に掲げ、事業にまい進中である。こうした経営目標が実現した暁には、株式公開の実現性は一気に高まる。今回は、同社の栫社長に同社の事業展開についてお聞きした。
【会社概要】
| 企業名 | アイ･メットエレクトロニクス株式会社 |
| 所在地 | 東京都品川区西五反田７−８−１１ |
| 代表者名 | 代表取締役社長 栫 一哉 |
| 事業概要 | ソフトウェアの開発、ネットワークの設計・構築 ITコンサルティング |
| URL | http://www.imet.co.jp/others/home.html |
（１）「営業力」、「技術力」を支える豊富な人材
Question 1：
はじめに、「アイ・メットエレクトロニクス」という社名の由来からお聞かせください。
「I」はIntelligence、「M」はMultimedia、「E」はEntertainment、「T」はTechnologyで、「アイ・メット」です。マルチメディアは今となっては死語になっているかもしれませんが．．．。それに「ア」が一番先につくのは電話帳で最初に出てきて調べやすいということも意識していました。
さらに、社名に「エレクトロニクス」を付けたのは、組込み系のソフト開発業務や半導体のマスク設計など、エレクトロニクス分野に注目していたことによります。ただ、半導体産業は好不況の波が大きいので、半年後には、業務の見直しを行いました。ちなみに、創業当時からNTT（日本電信電話株式会社）さんとは取引があり今日に至っています。
Question 2：
何故、NTTさんと取引を行おうと考えられたのですか？
会社の設立当初から「日本一の企業」と付き合おうという気概で取り組んできました。
NTTさんとは経理全般のシステム開発業務からスタートしましたが、当然、最初のうちは直接取引はできませんでした。しかし、３年後くらいにNTTさんには口座を開設して頂き、それ以来今日に至っています。
Question 3：
設立後わずか3年で、日本を代表する企業であるNTTさんとの直接取引ができたのはどのような点がポイントだとお考えですか？
一言でいえば、人的関係が大きかったと思います。技術力を認めて貰って、この会社と付き合っても大丈夫だという信用を得たことが、取引につながった一番の理由じゃないでしょうか。
現在ではNTTグループから人材を招聘するなど人的交流も行っているようですね。エレクトロニクス分野からスタートして、NTTさんの経理情報システムの応援、そしてアプリケーションソフト関連、ネットワークシステムへと事業領域を広げながら展開してこられたわけですね。
そうです。その後NEC（日本電気株式会社）さんとの取引もできました。当時は「MIS本部」（Management Information System）と中央研究所が統合されて別社にしようという時期で、株式会社NEC情報システムズの前身です。NEC情報システムズさんは
NECグループ全社の「生産管理システム」を取り仕切ることになり、これを切っ掛けに取引が始まりました。
この他の取引先企業としては、野村総研（株式会社野村総合研究所）さん、みずほ情報総研（株式会社）さん、セイコーエプソン（株式会社）さん、日本ヒューレット・パッカード（株式会社）さん、ソニー（株式会社）さんなど、一つの会社に偏らないで、幅広く取引を行うように心がけています。
こうした取引先の拡大によって、現在は、�＾貳姪�に言うアプリケーションの開発業務、�▲優奪肇錙璽�の設計・構築・管理・保守・監視業務、��NTTを中心としたインフラ系と通信回線の設計・管理業務、そして携帯電話の組込みソフト開発業務、の3つが事業の大きな柱になっています。さらに、最近はいわゆるJ−SOX法に対応した内部統制、業務改善、IT統制業務といったコンサルティング業務分野に人材などの経営資源を振り向け始めています。
Question 5：
日本を代表する名立たる大手企業との直接取引ができていることはすごいことですね。改めて貴社の強みはどういったところあるのかを
お聞かせください。
栫 社長
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他社との比較で、当社の強みについてはいつも考えているのですが、ありていにいえば、「営業力」と「技術力」に集約できるのはないでしょうか。 「営業」というのは一言でいえば、人間関係です。例えば、当社がシステム構築に携わっていた時に、プリンターがセイコーエプソンさんだったとわかり、同社の営業担当者と交流を持つようになったり、社外研修を受講している時に隣の席にいた人がヒューレット・パッカードさんの社員で、名刺交換をしたことが切っ掛けとなって、それぞれ取引ができるようになりました。 |
設立当初は私自身が全てやっていましたが、今では営業担当者がおりますので、各人営業を行っています。ただ、売上高を伸ばすことが私の主な仕事の１つですから、今でも３分の１くらいは私が係っています。
「技術」もヒトに依存していますので、人材育成を図りながら、技術力向上に努めています。
第1は現場主義です。現場で習得してもらうのが何よりも身に付きやすいと考えています。
第2は「英語力」の向上を社員に求めています。コンピュータの共通言語はコンピュータの発祥の地がアメリカでということもあり、英語だからです。
第3は技術資格です。社員には「ソフトウェア情報技術者」（旧第一種情報処理技術者）など資格を得ることを奨励しています。
もちろん、資格取得が目的でなく、取った資格を活かせる仕事に就いてもらうように、人事面では適材適所に配置できるよう配慮しています。
一例を挙げますとCCNA（注１）を取ったらネットワークの設計とか設定などに就かせます。TOEIC（注２）800点以上の人なら英語を使える
職場に人員をシフトするようにしています。現在、フランスに２人、台湾に３人派遣しています。フランスは電話基地局の現地調整、台湾ではWiMAX対応の通信インフラの設定を担当させています。3ヵ月に１回は帰国しますが長期滞在です。
（注１）CCNAとは、「Cisco Certified Network Associate」の略で、ルータのシェアで最大のシスコ・システム社の製品を中心にネットワークの基本的知識とルータについての深い知識が要求される試験。年々、認知度が高くなり、ネットワークエンジニアにとっては必要不可欠の資格となっている。
（注２）TOEIC（トーイック）とは「Test of English for International Communication」の略で、英語によるコミュニケーション能力を
幅広く評価する世界共通のテスト。
Question 6：
営業も技術も確かに人材によるところが大きいですね。貴社はすでに100名を超す社員を擁しておられますが、どのようにして人材確保を行ってこられたのですか？
最初は中途採用で賄わざるを得ませんでしたが、設立3期目からは新卒者の採用を始めました。当時はバブルも弾けて、結構、応募者が集まりまして、多いときには150名もの応募がありました。そのときは17名を採用しました。昨年は団塊の世代の方たちが大勢退職するということで注目された2007年問題の年でしたので、その煽りを受けて、新規採用は苦戦しました。昨年は新卒者6名と中途採用24名を採用しました。
Question 7：
中途採用は人材紹介会社などを活用して採用されているのですか？
専門学校のご紹介からがメインです。働き始めてからIT関連に興味を持ったり、働きながら専門学校で勉強したいとか、異業種からIT関係に転職したいとか、それぞれ動機は異なるものの、働いた後にまた専門学校に通うという若者が多くいます。この専門学校に通う若者たちが技術資格を取ってから当社にきてくれます。
同校の良さは、情報処理、CCNA、Linux（注３）とか、LPIC−1、−2、−3(注４)などのネットワーク関係、サン・マイクロシステムのJAVAの資格などを取らなければ卒業できませんので、技術面においては不安が少なく、即戦力としての期待が高い点にあります。ちなみに、最近はネットワーク系にフォーカスして採用しています。
（注３）Linuxとは本来、OSの基盤となる中核ソフトウェア「カーネル」のみを指す呼称。
（注４）LPICとは「Linux Professional Institute Certification」の略称で、特定非営利活動法人Linux技術者認定機関「LPI」の実施する、Linux技術者認定試験。LPICは2008年8月現在、全世界で19万1千人以上が受験し、6万人以上のLPIC認定者が生まれている。これはLinux技術者認定試験では世界最大。2008年8月には日本国内での累計受験者数が10万2千人を突破した。
（２）「企画と提案」で新たな事業領域を開拓
Question 8：
中途採用の狙いは「即戦力」として期待できます。一方、設立3年目から継続して採用してきた新入社員組はこの間、育成されてきたと思いますが、現在はかなり戦力になっているのでしょうか？
初期の新入社員も10年くらいたっていますので、大分力がついてきて、SEとかグループリーダーという位置づけに育ってきています。有難いことに当社の離職率は5％を切っていますので、相当な戦力アップに貢献してくれていると自負しています。
Question 9：
人材の層に厚みがでてきていることが背景にあると思いますが、従来のアプリケーションソフトの開発業務から最近ではコンサルティング業務にシフトしてきていますね。
コンサルティング（特にITコンサルティング）やプロジェクトマネージャーの業務に注力しています。アプリケーションソフトの開発はいずれ契約期限を迎える一方で、技術革新が早いことや人材を育てるのに時間が掛かるという課題があります。また、外部環境を見渡すと、プログラマーも大事ですが、最近はインドや中国から安い単価のものがどんどん入ってきて、採算ベースに合わない案件がでてきており付加価値の高い上流工程にシフト、展開していくことを重要視しています。
Question 10：
具体的には、昨年にJ-SOX法関連のビジネスを立ち上げ、早くも数社の実績が出てきていますね。コンサル部隊は何名ほどいらっしゃるのですか、今後はこの比率をどのように考えておられますか？
まだ10数名ですが、数年後には80名くらいの陣容にしたいと考えています。この分野の顧客先は野村総研さん、みずほ情報総研さんや外資系のヘッドストロング（株式会社ヘッドストロング・ジャパン）さんなどです。こうした企業の担当者とうちの担当者が付き合うことにより、うちの技術者を極力活用して頂くことから始めています。
Question 11：
貴社の部隊であるコンサルタントを大手会社に派遣することは、時間当たり単価が高く、かつ継続していけるというメリットがあるということでしょうか？
アクセンチュア（株式会社）さんの本部長や野村総研さんの部長とのお話の中で、大手のコンサル会社は請負い業務を殆どやらなくなり、時間単価で顧客と契約をしているという話しに触発され、当社も合わせていくことにしました。請負いだと当社のような経営基盤では事業リスクが高いことや大手企業がやっているのですから、中小企業でもそうしていかなくては生き残っていけないと思っています。
コンサルティングの対象は、IT統制、J―SOX法対応の内部統制や、業務改善全般、例えば組織改正、人事改正、連結決算などがあります。
こうした一連のコンサルティングを受注しますと、事業はここだけで止まらず、システム開発や保守にまで展開できるということも大きなメリットです。また、大手企業は中国にプログラム開発部隊を持っていて、オフショア開発を進めています。当社はコンピュータの共通言語である英語力が高いのでブリッジSEができます。保守・運用は採算が良いことも見逃せません。
コンサルティング業務を立ち上げることで、当社の事業ドメインが上流工程から開発段階まで広がってきました。
新規事業概要図
出所：アイ・メットエレクトロニクス社の資料より抜粋。 |
Question 12：
新規事業という点では、セキュリティ関連の業務にも注力していると伺っていますが、具体的な展開についてお聞かせ下さい。
NTT東日本（東日本電信電話株式会社）さんから受注しているある大学のネットワーク監視とか、サーバーの運用をしています。さらには、内外を問わず世の中に出ているセキュリティ製品に目を配り、その中からユーザーにとって良いと思われる製品を提案したり、構築したりしています。
つまり、良い製品を、適正なコストで仕入れることによって、お客さんにとって最適のパフォーマンスが挙げられるような「企画と提案」を行っています。当社の社員が派遣先企業で業務を行う中で、いろいろな問合せが本社に入ります。例えば、「客先からこういわれたがいいものはないか？」という問い合わせには、当社が様々な製品情報を把握しているので、ユーザーには幅広い選択肢の提供ができます。同じような製品が2〜3個あるだけでも、「性能はAが良いが、価格はBの方が安い」といったことだけでも選択肢の幅が広がるような提案ができるわけです。
企業のIT投資は湯水のごとく使えるわけではありませんから、企業にとってIT投資が健全に行われているかどうかまで判断できるような企画・提案を目指しています。
（３）志し高く、グローバル展開を目指す
Question 13：
企画・提案が功を奏し、かなり大掛かりな枠組みの中で、新しいビジネス展開を描かれているとお聞きしましたが？
詳細なことはお話ができませんが、「通信と放送の融合」という時代の流れを読み、ある大手企業に企画・提案し、その方向で採択され、事業に向けた準備を進めているところです。
通信と放送の融合が進むということは、データ音声、データ画像などが現在よりも進みますので、インターネットに代表するインフラの再構築がでてきます。そこには新しいネットワークの提案、構築、設計など広範囲の事業が創出されるとみています。
当社はその中でも、これまで培ってきた技術力やノウハウを活かして、「技術サポート」業務から手掛ける方針です。
例えば、「OSは会社のものです」、「セキュリティも会社のものです」といった資産管理業務があります。また、IDCを作ろうとしているところが何社かありまして、そこに当社が企画から入っていきます。そしてより良いセキュリティなど、こういうことをやった方がいいのではという提案をしていきます。つまり、IDM（Internet Identity Management）サービスを中心として、コンサルティング、J―SOX法対策、アンチ・ウイルス設定管理に代表されるセキュリティ関連業務など、インフラテーションの企画、アプリケーションの提案、設計、開発、見直し（これらを総称して技術サポート）をしていきます。さらに踏み込んでいきますと、最終的には自前のIDCセンターを持ちたいと考えています。
見込み顧客の大手企業を手始めに進めますが、その先には大手企業の取引先企業が無数にありますので、市場規模の広い分野の中で事業展開ができるものと確信しています。
Question 14：
今まで培ってきた技術とかコンサルテーションへの参入などによって、更なる飛躍期を迎えつつあるわけですね。
そうです。最初は資産管理、セキュリティなどから手がけていけばよいと思っています。実際やっている中では、「公認情報システム監査人」（CICA）という資格を社員の１人が取得しましたし、12月にはもう１人取得する予定です。これはサーバーの運用・監視についての国際的に決められた基準の資格です。企画をやりながら、先進的な国内・海外製品の評価から販売でノウハウを活かして安くて信頼性のある製品を提案するということです。
Question 15：
事業拡大に弾みをつける中で、資金需要も旺盛と聞きますし、IPOへの意欲も高いと伺っていますが、中期的な企業像とあわせて、栫社長のお考えをお聞きしたいのですが・・・
まず、資金需要ですが、これは人員の採用、教育、社内設備の増強などに充当したいと考えています。これまで増資といった直接金融は私をメインに経営陣の資金提供に限っていました。しかし、事業を拡大することや財務基盤の強化を図るためには、
まとまった資金を外部から調達しなければならい時期に差し掛かってきていると判断しています。
そこでまず、ベンチャーキャピタル会社さんなどに当たり始めたところです。米国のサブプラムローン問題の影響が、少なからず当社のような企業にも波及してきているのは残念ではありますが、手ごたえは十分あります。
直接金融による資金調達を行うことに踏み切ったもう一つの背景には、株式公開を目指すことを明確にしたからです。というのも、先ほどお話しました自前のIDCを持つためには、株式市場から資金調達を行うことが最適な手段と考えています。それを実現するための第一目標として3年後には、売上高25億円、経常利益10％強を掲げています。また、人員体制は200名、上流工程であるITコンサル、プロダクトマネージャに50名体制、IDC関連に50名くらい、あとの100名が既存のビジネスの人員と考えています。ちなみに、09年3月期の業績は10〜15%の増収で推移していますが、Ｍ＆Ａ案件も視野に入れており、これが実現すればさらなる上乗せが見込まれます。
Question 16：
足元の業績に裏付けられた中期計画と推察され、実現性は高いといえそうですね。
日本は「通信」をキーワードにすると技術力にしても、開発力にしても、世界一なんですね。例えば携帯電話にしても、あんなに小さくできるのも日本の技術ですし、われわれも通信を中心としたビジネスをやり、ずっとそれを手がけていきたいと思います。それをやることで、国内のマーケットだけでなく、海外にまで進出できるチャンスがあると考えているからです。
アプリケーションは日本国内でしか使えませんが、通信手段ならば英語だろうと日本語だろうと関係ありませんからマーケットシェアはワールドワイドに拡がっていくと思います。ですから私どもは「世界一あるいは日本一の企業とお付き合いするんだ」という設立当初からの気概を忘れずに、今後とも事業を行っていきたいです。
高い志を持って事業を行っている栫社長の思いがひしひしと伝わってきました。今日はありがとうございました。